加藤さまは奥さまを早くに亡くされ、親族はふたりの息子さまがいるだけでした。
ひとりの息子さまは加藤さまと同居されており、実質的な遺産相続人と考えられていました。加藤さまも息子さまにほとんどの財産をお渡しする予定でしたが、ある家族会議の席でもうひとりの息子さまが、自分の子供の養育費の件で、財産の分与を主張してきたのです。
法的には半分の権利がある息子さまにまったく渡さないというのも可哀そうな話ですが、面倒をみている息子さまの手前、もうひとりの息子さまへ法定とおりの財産の半分を渡すのもやり過ぎのような気がしました。
私共はそんな加藤さまよりご依頼を受け、早速加藤さまの財産の目録を作りはじめました。
財産目録が出来上がり、加藤さまにご提示すると、加藤さまは、息子さま、そしてその他の家族の方々に対しての財産分割の意思を明確にしたいとの意向を受けました。
そこで、私共は、財産の分け方だけでない加藤さまの家族に対する愛情の表現を記述した、遺言および家族契約書の作成を提案し、作成を始めました。
財産の指定をするうちに、ひとりひとりの家族への想いがこみ上げ、家族への感謝の気持ちをまとめたものや、自身の写真や持ち物の処分の仕方、家訓の明示やお正月の集まる場所など、家族が取り決める様々なことを作成いたしました。
その完成には、加藤さまだけの意思を羅列するのではなく、関係者の皆さまに一定の意見を聴取させていただいて調整し家族契約書を作成しました。
またそれをもとに遺言書を公正証書にして、家族が揉めることがないような手続きをとることができ、加藤さまだけでなく皆さまに満足していただきました。