周囲に言えない秘密や趣味、誰にも教えていない預金口座や現金、借金、不動産…。 日本には「知らぬが仏」という言葉がある通り、秘密にすることによって穏便に事を済ませようとする文化がありますが、相続が発生すると状況は一変します。
死後に起こりうるトラブルを避けられるよう、このブログ・テーマでは「他人名義の株式の処理方法」「妻に教えていない借金の扱い方」「愛人や隠し子などへの対応」など、それぞれの隠しごと別に考え方や対処法を、これまでの実務経験を踏まえながら具体例を挙げながら解説します。
これまで紹介してきた通り、隠しごとが露呈する場合の多くは、トラブルの発生が原因です。
各種の訴訟はもちろん、税務調査などにより相続がスムーズにいかないと、事態を明らかにしようとする動きが始まり、隠されていた事実が見つかってしまうのです。
ですから隠しごとを露呈させないためには、「円滑な相続」こそ一番大きなカギと言えるのです。
そこでおすすめなのが、遺産の分割方法を記した「遺産分割協議書」を社長の生前に作成することです。
相続人の要望を聞きながら、いろいろな配慮を盛り込んだものを作り、子供たちなど相続人全員の承認をもらっておけば、トラブルを防ぐ効果は遺言書以上です。
ただし、法的に絶対的な効力がある遺言書に対して、生前に作成した「遺産分割協議書」には法的な弱点もあり、万全とは言えません。
相続人の誰かが「手続きに納得できない部分がある」と主張したり、実印を変更したりすれば無効になるかもしれないのです。
その点、遺言書であれば必ず優先されます。
ただ、遺言書が社長の考えだけで作られるのに比べ、「遺産分割協議書」は同意を得て作られるため、心理的には反故にしにくいものです。
相続人全員が納得できるものを前もって作っておけば、万が一隠しごとがばれた時にも相応な協議を持つ場ができ、最悪の場合でも秘密が拡散するのを防ぐことができます。