周囲に言えない秘密や趣味、誰にも教えていない預金口座や現金、借金、不動産…。 日本には「知らぬが仏」という言葉がある通り、秘密にすることによって穏便に事を済ませようとする文化がありますが、相続が発生すると状況は一変します。
死後に起こりうるトラブルを避けられるよう、このブログ・テーマでは「他人名義の株式の処理方法」「妻に教えていない借金の扱い方」「愛人や隠し子などへの対応」など、それぞれの隠しごと別に考え方や対処法を、これまでの実務経験を踏まえながら具体例を挙げながら解説します。
所有する不動産を隠している例も時々目にします。
やはり愛人を住まわせていることが多いのですが、他にも趣味の品などを置いていたり、投資用のマンションだったりという場合もあります。そしてこちらも、何の対策もとっていなければ相続発生時に存在がばれて、トラブルとなってしまいます。
社長の多くは「隠しマンション」を自分名義にしています。
たとえば愛人名義にすると「タダ取りされるのでは?」という不安があるためでしょう。
また、税務申告するほどの収入がない女性がマンションを購入するとなると、資金の出所を税務当局から疑問視されるというリスクもあり、自身の名義にすることが多いようです。
この場合、相続が発生すると相続権のない愛人は住む場所を失ってしまいます。
それでも、その後の暮らしに困らないだけの財産があればよいのですが、そうでなければ生活が成り立ちません。
たとえ社長の家族とトラブルになることがわかっていても「存在を明らかにして交渉したい」と考えるのは必然でしょう。
もう一つ、「愛人名義でマンションを購入して会社が借り受ける」という形で不動産を隠して利用しているケースがあります。
賃借料を愛人への「手当て」とすることで、会社の会計に組み込んでいるわけです。
こういったやり方であれば、相続発生時でも愛人は住む場所を失わずに済みます。
ただし、会社の後継者が賃貸借契約について確認すれば、その存在がわかってしまいます。
その場合、事業の関連性がないのであれば賃借料とは認められませんし、愛人の側も収入が所得と見なされて課税されるため、おすすめできる方法ではありません。
また、先ほども述べましたが、このような愛人契約は公序良俗違反ですので、愛人からのさまざまな請求は法的に無効です。
同じく社長が支払ったお手当て等の返還請求を起こしても無効とされます。
法律的にはすべて意味のないやりとりと見なされるのです。
中小企業では息子が事業を受け継ぐことが多いので、相続発生時まで何も対策を講じていなければ家族にばれてしまい「何をしていたんだ、親父のやつ」と白眼視されることになりかねません。
愛人の側からすると、社長が亡くなって賃貸借契約を切られれば収入がなくなってしまいます。
ですから法的には無効であってもさまざまな権利を主張して、家族との間に紛争を引き起こすこともあります。
その結果、社長が守ってきた夫として父として、また経営者としての威厳は失われ、後にはひどい汚名が残ることになりかねません。
愛人契約はさまざまな悪影響をもたらす元凶ともいえますので、生前に解消することをおすすめします。