周囲に言えない秘密や趣味、誰にも教えていない預金口座や現金、借金、不動産…。 日本には「知らぬが仏」という言葉がある通り、秘密にすることによって穏便に事を済ませようとする文化がありますが、相続が発生すると状況は一変します。
死後に起こりうるトラブルを避けられるよう、このブログ・テーマでは「他人名義の株式の処理方法」「妻に教えていない借金の扱い方」「愛人や隠し子などへの対応」など、それぞれの隠しごと別に考え方や対処法を、これまでの実務経験を踏まえながら具体例を挙げながら解説します。
隠しごとの中で最も影響が大きいのは女性関係です。
愛人や付き合いのあった女性などのことがばれたら、家族にとってはやはり大きなダメージとなります。
「飲食店の女性と付き合っていた」「職場の女性と不倫関係にあった」など、生前には隠していた女性関係が、死後明らかになってしまうケースは珍しくありません。
たいていの場合、妻はなんとなくその存在を感じ取っているので、それほどのショックはないかもしれません。
ただ、娘や思春期の孫たちは違います。
尊敬していた父親、あるいはお祖父ちゃんにそんな女性関係があったことを知ると、気持ちの上で大きなダメージを受けてしまいます。
多くの人は相続時に起きるトラブルをどこか「他人ごと」ととらえています。
自分はもういないのだから……という考えがあるのでしょう。
でも父親や祖父が不倫をしていたことを知ったときのことをリアルに想像してみると、それでは済まないことがわかるはずです。
社長のことを「素敵なお父さん」と愛してくれていた娘や、「立派なお祖父ちゃん」として親しんでくれていた孫たちから一転、憎み、嫌われてしまうこともあり得ます。
すでに亡くなってしまった社長には、そんな彼らの気持ちを癒す手段はありません。
消えない心の傷を相続させてしまうことは、ひどく残酷な仕打ちではないでしょうか。
さらに、愛人などの女性問題には、他の隠しごとを生み出しやすいという特徴があります。
愛人の存在はただ「不倫関係にある女性がいる」というだけにとどまりません。
お手当てのための隠し口座や、愛人を住まわせるための隠し不動産、密かに結んだ従業員契約、さらには隠し子の問題へとつながっていくのが女性関係の怖いところです。
ちなみに私共の事務所では、愛人契約は公序良俗違反であり認めていません。
愛人契約自体が法的な保護の対象ではないため、社長、愛人どちらからの依頼でもその関係を基にした行為であれば全面的にバックアップできないからです。
事実が判明した場合は、税務処理をする以前に愛人契約を解消していく方向でご指導やアドバイスをしています。
不適切な関係の維持は社長のみならず、関係するすべての人のためにならないと考えているからです。