周囲に言えない秘密や趣味、誰にも教えていない預金口座や現金、借金、不動産…。 日本には「知らぬが仏」という言葉がある通り、秘密にすることによって穏便に事を済ませようとする文化がありますが、相続が発生すると状況は一変します。
死後に起こりうるトラブルを避けられるよう、このブログ・テーマでは「他人名義の株式の処理方法」「妻に教えていない借金の扱い方」「愛人や隠し子などへの対応」など、それぞれの隠しごと別に考え方や対処法を、これまでの実務経験を踏まえながら具体例を挙げながら解説します。
お酒を飲みに行く際や、ゴルフやギャンブルなどの趣味、大きな買い物、あるいは女性との交際など、世の中にはお金のかかる楽しみがたくさんあります。
そのための資金をプールしてある口座、「隠し口座」も相続の際に大きな問題となります。
たとえば死後、会社の引き出しの奥底に大切に保管していたキャッシュカードが見つかった場合、これまで隠してきた口座のことが妻や家族に知られてしまいます。
相続人である遺族は口座の中身を知って、「何のためにこんなお金を?」と不信感を持つでしょう。ときにはその使い道も調べられ、ギャンブルにはまっていたことや女性との関係、隠しておきたかった趣味といった他の隠しごとが露呈してしまうこともあります。
また、生前にうまく物理的な証跡を消し去っていた場合は別の問題も発生します。
銀行が預金者の死亡を把握できず、凍結されない代わりに誰もが存在を知らない「休眠口座」となってしまうケースです。
たとえば、何等かの理由を付けて開設した愛人名義の口座をプライベートの資金確保に利用しようとした場合、愛人を「従業員」ということにして「給与の支払」という形でお金を振り込むと、節税にもなるので一石二鳥になります。
愛人が実際に会社の業務に従事して、二人の合意の下で税務処理をしている場合は大きな問題にならないかもしれません。
しかし、その女性も口座のことをすっかり忘れていた場合は、法令違反につながる可能性があります。
また、社長が亡くなってしまうと、やはりその口座は休眠口座になってしまいます。
ただ、これまでは休眠口座とともに誰にも知られることなく葬りさられていた隠しごとも、マイナンバー制が本格導入されると思わぬ形で露呈することが考えられます。
現状では「銀行口座とのひも付けはしない」ということになっていますが、将来的には個人のお金の流れを一つのナンバーで管理する動きが強まるとみられています。
そのため、いくつもの銀行に分散している社長名義の口座は関連づけられ、相続時に一つの口座が凍結されると隠し口座も凍結され、相続人たちがその存在を知ることになるでしょう。
また、愛人名義で作った口座も彼女名義の他の口座とひとまとめにして扱われるので、本人に隠して利用することは難しくなるでしょう。
もう一つ、財産の隠し方としてポピュラーなものに、「海外に置く」というものがあります。
これまで海外にある銀行口座や不動産などは、日本の税務当局に把握されにくいため、表に出しにくい資産をプールする手段として利用されることがあったようです。
ところが、近年は「国外財産調査制度」により、国外に保有する5000万円以上の財産は税務署に報告することが義務付けられました。海外の財産も捕捉されるため、海外に財産を隠すという企ては難しくなっています。
特に相続逃れを意図して海外に財産を移転する行為は税務署により厳しく監視されています。
家族に隠して国外資産を保有しながら何の対策もしていないと、申告漏れと見なされてトラブルが起きる危険性が高いのです。