周囲に言えない秘密や趣味、誰にも教えていない預金口座や現金、借金、不動産…。 日本には「知らぬが仏」という言葉がある通り、秘密にすることによって穏便に事を済ませようとする文化がありますが、相続が発生すると状況は一変します。
死後に起こりうるトラブルを避けられるよう、このブログ・テーマでは「他人名義の株式の処理方法」「妻に教えていない借金の扱い方」「愛人や隠し子などへの対応」など、それぞれの隠しごと別に考え方や対処法を、これまでの実務経験を踏まえながら具体例を挙げながら解説します。
◎どんなに完璧な隠しごとでも、対策なしでは相続時に必ず露呈する
◎隠しごとが相続発生時に家族を傷つけ経済的苦境に追い込む
社長の相続は一般的なサラリーマンの方々の相続に比べ、トラブルが起きる危険をたくさんはらんでいます。
これは、相続財産が多く、しかもその大半が分けにくい自社株や事業用資産などで占められているためです。
まず、相続財産のうちの現預金の比率が小さいので、相続税が支払ないというトラブルが多くみられます。
また、足りている場合でも、後継者が一番大きな財産である自社株のほとんどを取得するため、後継者以外の相続人の相続財産が非常に少額になることでもトラブルが発生します。
そういったことから生前に相続対策を行っておかないと、相続が原因で家族同士が財産を巡り争う「争族」に変じたり、事業承継がうまくいかず会社が行き詰まったりと、容易に大きなトラブルが起きてしまうのです。
そんな状況を防ぐため、社長は相続に対して生前にしっかりとした備えをしておく必要があるのです。
それに加え、もう一つ、社長の相続を複雑にする問題があります。
本来であれば最も強い絆で結ばれているはずの家族に絶対に言えないこと――隠しごとです。
トップとして会社を牽引する人の多くはエネルギーにあふれており、仕事はもちろんプライベートも目一杯充実させようとする人物です。
さらに比較的自由に使えるお金が多く、望むことを実現しやすいという環境的な要因もあります。
こういったことから、家族や従業員には知られたくない、知られるとちょっとまずい秘密を抱える人が少なくありません。
秘密にしている事柄の大きさや種類はさまざまですが、どうしても妻には隠し通したいと思っている人が多数派です。
その苦労はずいぶん大きなものだと思われます。
女性は男性に比べて細かなことによく気が付き、秘密を見破るのが得意です。「勘がいい」と言われるのは、相手のちょっとした仕草や声色の変化などを読み取る力が高いためでしょう。
ましてや妻は長年連れ添い、一番身近に観察してきた女性です。秘密を見破る能力は、ベテランの国税査察官よりも高いかもしれません。